【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―クレープ、生地売り切れ 編(縁がない)―

2026年10月4日

吾輩は猫である ―クレープ、生地売り切れ 編(縁がない)―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

人間は、
甘いものを食べたくなる時がある。

今日はクレープ。

頭の中は、
もう決まっている。

生クリーム。

バナナ。

チョコ。

あるいは、
少し大人しく、
シュガーバター。

店へ向かう。

列も、
それほど長くない。

これはいける。

人間は、
そう思ったらしい。

だが、
店の前に一枚の札がある。

「本日、生地売り切れ。」

吾輩は思う。

クレープ屋で、
生地がない。

これは、
なかなか致命的である。

猫で言えば、

「猫缶はあります。
ただし中身はありません。」

と言われるようなものだ。

人間は、
しばらく札を見る。

もう一度見る。

見ても、
生地は復活しない。

人間はこれを、
縁がないと言う。

前にも食べようとして、
店が閉まっていた。

別の日には、
時間が合わなかった。

そして今日は、
生地売り切れ。

ここまで重なると、
少し運命めいてくる。

吾輩は思う。

本当に縁がないのか。

それとも、
単にタイミングが悪いだけなのか。

人間は、
うまくいかないことが続くと、
すぐ物語を作る。

縁がない。

運が悪い。

今日はそういう日だ。

それで、
少し納得する。

猫なら、
目的の場所に誰かがいれば、
別の場所へ行く。

お気に入りの箱が取られていれば、
違う箱で寝る。

それほど引きずらぬ。

クレープがなければ、
別の甘いものを食べればよい。

そう思う。

だが、
食べられないとなると、
余計に食べたくなる。

人間とは、
実に面倒である。

帰り道でも、
頭の中にはクレープが残る。

食べていないのに、
味まで想像できる。

これはもう、
執着なのかもしれぬ。

吾輩は猫である。
クレープは食べぬ。

だが、
手に入らないものほど気になる気持ちは、
少し分かる。

クレープ、生地売り切れとは、
ただ甘いものを食べ損ねた話ではない。

縁がないと思いながらも、
次に店の前を通った時、
きっとまた覗いてしまう。

人間とは、
そういう諦めの悪い生き物なのだ。


縁なくも
また店の前
覗きけり

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gonta

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