【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫と神社 編―

2026年10月22日

吾輩は猫である ―猫と神社 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

神社には、
独特の静けさがある。

鳥居をくぐる。

石段を上る。

砂利を踏む音が、
少しだけ大きく聞こえる。

人間はここを、
神社と呼ぶ。

吾輩は思う。

なぜ、
人間はわざわざここまで来るのか。

願い事をする。

合格しますように。

健康でありますように。

仕事がうまくいきますように。

恋が実りますように。

ずいぶん頼み事が多い。

猫なら、
飯が出ればよい。

暖かい場所があればよい。

それ以上は、
あまり望まぬ。

だが、
人間を見ていると、
神社へ来る理由は、
願い事だけではないように思える。

手を合わせる。

少し黙る。

そして、
帰っていく。

来た時より、
ほんの少しだけ顔が落ち着いている。

吾輩は思う。

神社とは、
神様に何かを頼む場所というより、
自分の心を一度静かにする場所なのではないかと。

普段の人間は、
忙しい。

仕事。

電話。

メール。

予定。

考え事。

頭の中は、
いつも何かで埋まっている。

だが、
境内に入れば、
少しだけ歩く速度が落ちる。

大きな木を見る。

風の音を聞く。

空を見上げる。

それだけで、
人間は少し静かになる。

猫も、
静かな場所を好む。

社殿の脇。

石垣の上。

木陰。

人が少ない時間なら、
なかなか居心地がよい。

もっとも、
神社に住んでいる猫を見て、

「神様の使いかな。」

などと言う人間もいる。

吾輩は思う。

そこまで大したものではない。

たぶん、
日当たりがよいだけである。

だが、
人間が少し嬉しそうになるなら、
否定する必要もない。

猫は、
神様の言葉を伝えぬ。

未来も占わぬ。

ただ、
そこにいる。

それでも、
人間は猫を見ると足を止める。

少し笑う。

その瞬間だけ、
願い事を忘れる。

案外、
それで十分なのかもしれぬ。

吾輩は猫である。
神様のことは分からぬ。

だが、
騒がしい日常から少し離れ、
静かに自分へ戻れる場所の価値は知っている。

猫と神社とは、
どこか似ている。

何かを教えてくれるわけではない。

答えをくれるわけでもない。

ただ、
そこにいるだけで、
人間を少し静かにしてくれる存在なのだ。


手を合わせ
猫も黙って
風を聞く

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gonta

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