吾輩は猫である。
名前はまだない。
人間は、
何かをしたあとに、
すぐ元通りになりたがる。
治療。
美容施術。
手術。
運動。
そして、
少し休む必要があると言われる。
人間はこれを、
ダウンタイムと呼ぶ。
吾輩は思う。
ずいぶん後ろ向きな名前である。
ダウン。
止まる。
休む。
人間は、
そういう時間を、
なぜか損したように感じる。
だが、
体はそう簡単ではない。
腫れる。
赤くなる。
痛む。
疲れる。
そして、
少しずつ戻っていく。
その時間も、
治る過程の一部なのである。
猫なら、
具合が悪ければ隠れる。
眠る。
動かない。
飯も少し控える。
無理して、
「本日も通常営業です。」
などとは言わない。
吾輩は思う。
人間は、
回復まで効率化しようとしすぎる。
明日には仕事へ。
週末までには元通り。
誰にも気づかれずに。
予定通りに。
だが、
体は予定表を見てくれない。
一日で戻る者もいれば、
少し長くかかる者もいる。
同じ施術でも、
反応は違う。
それでよい。
大切なのは、
早く見せかけることではない。
きちんと戻ることだ。
吾輩は思う。
ダウンタイムとは、
何もしていない時間ではない。
体の中では、
忙しく修復している。
表から見えぬだけである。
人間は、
見えない仕事を軽く見る。
だが、
本当に大切なことほど、
静かなところで進むことがある。
傷が閉じる。
炎症が引く。
疲れが抜ける。
それを待つ。
待つことも、
立派な行動である。
吾輩は猫である。
一日の大半を寝ている。
だが、
それをダウンタイムとは呼ばぬ。
必要時間である。
人間も、
少しくらいそう考えればよい。
ダウンタイムとは、
止まってしまった時間ではない。
次に普通に動ける自分へ戻るための、
静かな回復時間なのだ。
休むほど
見えぬところで
身が戻る