吾輩は猫である。名はまだない。だが今日は、少しだけ“甘い日”であった。 朝から飼い主が落ち着かない。スーツではないが、どこか勝負服のような服装。将棋盤を持ち、扇子を忍ばせ、「社会人団体戦、行ってきます」と玄関を出ていった。 団体戦とは、棋力の勝負であるだけでなく、仲間と組んで、勝ち負けを分け合う日らしい。猫には仲間はいないが、“盤の上の絆”というやつは、なんだか粋である。 夕方、少し疲れた顔で戻った飼い主が、手にしていたのは――豆腐アイス。 白く、やさしい冷たさ。勝負の火照りをそっと包むような味。「今日は ...