吾輩は猫である。名前はまだない。 いつもの場所に、少し違う気配がある。新しい匂い、新しい足音。 人間はこれを、交代と呼ぶ。 新しい猫が来る。若く、よく動き、好奇心も強い。 人は、自然とそちらを見る。 それは、悪いことではない。新しい命には、新しい光がある。 だが、先にいた猫は、全部わかっている。 空気の変化も、視線の動きも、呼ばれる回数も。 吾輩は思う。交代とは、入れ替わることではないと。 積み重ねは、消えぬ。 長く一緒にいた時間、隣で過ごした夜、静かに寄り添った記憶。それらは、新しさでは置き換えられぬ。 ...