吾輩は猫である。名はまだない。 路地裏の集会所――魚屋の裏手に、四匹の猫が顔をそろえた。男猫は黒と虎、女猫は三毛と白。皿の上には焼き魚一尾。これが恋と食事の駆け引きの始まりであった。 黒猫はさっそく身を差し出し、「どうぞ先に」と三毛に譲る。虎猫はその隙に、白猫へ鯛の骨を押しやり、「君に似合う」と口説く。 三毛は黒猫の誠実さに目を細め、白猫は虎猫の押しに頬を赤らめる。だが魚は一尾しかない。四匹の視線が交わると、恋も食欲も入り混じった緊張が走る。 結局、身の大きい虎猫が先にかぶりつき、黒猫は静かに尻尾を巻いた ...