吾輩は猫である ― 母の日篇 ― 吾輩は猫である。名はないが、「コラまたのって!」とよく呼ばれる。 今日は人間界で「母の日」とやら。町の花屋は赤いカーネーションで溢れ、スーパーマーケットでは「感謝の気持ちをカタチに」などと書かれたチラシが舞っておる。どうやら人間は、特定の日にだけ感謝を思い出す生き物のようだ。 吾輩にも母はいた。目を開ける前から温かかった、灰色の長毛種である。物静かで、吾輩がじゃれて耳を噛んでも、怒りはせずに舐めてくれた。その背中のぬくもりは、今日も忘れぬ。 だが吾輩が知る限り、人間の母た ...