吾輩は猫である。名はまだないが、雨の日はいつも名前を呼ばれる。たいてい「また足ぬらして!タオルどこ!?」である。 このごろ空が忙しい。晴れるかと思えば、ぽつぽつと降り出し、気づけば裏路地が川のようになる。人間どもはこれを「五月雨」と呼ぶらしい。なんとも儚げで詩的な名前だが、吾輩に言わせれば「ただの濡れるやつ」である。 だが嫌いではない。雨粒が瓦を打つ音、葉の上で跳ねる様、窓辺にできる水の模様――どれも静けさの中に小さな変化があり、飽きぬ。ただし、足は確実に濡れる。 家の中では、人間が洗濯物を恨めしげに見つ ...