吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 結婚式ラッシュ 編―

吾輩は猫である ― 結婚式ラッシュ 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

この秋は、どうにも慌ただしい。
飼い主が立て続けに礼服を取り出し、
「またご祝儀だ」「次は京都だ」と嘆いている。
どうやら「結婚式ラッシュ」なるものが到来しているらしい。

玄関には引き出物の紙袋が積まれ、
カタログギフトや菓子折りが次々と運び込まれる。
吾輩は箱のリボンを解く役目を買って出るが、
人間は「こら、やめて!」と大慌てだ。

結婚式というのは、人が集い、
笑いと涙を分かち合う特別な場だという。
だが吾輩の眼には、
慣れぬ靴で足を痛め、
ご祝儀袋に財布を軽くし、
二次会で疲れ果てる飼い主の姿しか映らぬ。

とはいえ、写真に収められた新郎新婦の笑顔は、
まるで春の陽射しのように明るい。
その幸福が町全体に少しでも広がれば、
吾輩の昼寝も心地よくなるというものだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが願う。
この結婚式ラッシュが、人々にとって
出費よりも絆の実りとなりますように。

祝いつつ 財布は軽く 秋の風


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gonta

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