【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫ドライ vs ウェット 編―

2025年12月12日

吾輩は猫である ―猫ドライ vs ウェット 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

今日の食卓(つまり吾輩の皿)は、
いつになく緊張していた。

右側には“カリッ”と音を立てるドライフード。
左側には“ふわり”と香り立つウェットフード。
飼い主が腕を組んで言う。
「どっちが好きなのか、今日はっきりさせようか」

吾輩は胸を張った。
――この勝負、受けて立つ。

まずはドライフード。
サクッ、カリッ。
その歯ざわりはまさに職人の技。
咀嚼のリズムが整うと、
心まで規則正しくなるようだ。
「これぞ、シンプルにして基本の味」と吾輩は感心した。

続いてウェットフード。
ひと口で、肉と魚の香りがふんわり広がり、
思わず瞳が細くなる。
水分が身体中をしみわたるようで、
――うむ、これはご馳走である。

飼い主がニヤリと問いかける。
「で、どっち?」
吾輩はしばし沈黙した。
香りならウェット。
軽快さならドライ。
どちらも違う武器を持つ強者である。

結局、吾輩は両方を少しずつ食べて、
皿の前にどっしり座り込んだ。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが悟った。
――世界の争いの多くは、
 “片方を選ばねばならぬ”という思い込みから始まるのだ、と。
食は自由。答えは二つでよい。

飼い主が笑いながら頭を撫でた。
「やっぱり君は欲張りだね」
吾輩は胸を張って鳴いた。
それは最大の褒め言葉である。

選ばずに どちらも幸せ 皿二つ


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gonta

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