吾輩は猫である。名はまだない。
だが本日をもって、国家資格保有猫となった。
「基本情報技術者試験」――
略してFE(Feline Engineerではない)。
飼い主が寝落ちした後の深夜、
キーボードを踏んでいたら偶然申し込んでしまった。
それが、すべての始まりである。
IT用語 音より先に 匂いで覚え
午前の四択は、
爪の先のひらめきで切り抜ける。
計算問題? 猫は直感でバイナリを読み取る生き物だ。
午後問題には難儀した。
アルゴリズムや疑似言語に、
時折「にゃ」と打ってしまい警告が出る。
だが、ポインタの概念は「ひもじゃらし」に例えるとすぐ理解できた。
セキュリティ問題では、
「フィッシング=カリカリ詐欺」だと判断し、
SSL証明書をかみ砕く夢を見た。
試験会場ではなく、CBT方式の小部屋。
監督者に「猫の受験は想定していません」と言われたが、
静かに目を細めてプレッシャーを与えたら、通してくれた。
結果発表。
「合格しました」の文字に、飼い主が絶叫した。
「え? どこに書いたの!?」「というかIDどうやって…」
吾輩はただ一言も発せず、
静かにモニターの前で香箱座り。
だが、どこか得意げだったに違いない。
この肉球にも ロジックはあるのだ。