吾輩は猫である。
名前はまだない。
休日になると、
人間は集まる。
駅前の会議室。
ホテルの一室。
そこには、
「未来」という文字が並んでいる。
人間はこれを、
不動産セミナーと呼ぶ。
家賃収入。
節税。
資産形成。
夢のような言葉が、
次々と並ぶ。
吾輩は思う。
良い話ほど、
静かに聞くべきだと。
「必ず儲かる。」
「今だけです。」
「皆さん始めています。」
そんな言葉ほど、
一歩引いて眺める。
猫は、
知らない餌には飛びつかぬ。
匂いを嗅ぎ、
様子を見て、
安全を確かめる。
それから、
ようやく口をつける。
人間は、
利益ばかり見てしまう。
だが、
空室はないのか。
修繕費はどうするのか。
災害が起きたら。
金利が上がったら。
良い話には、
必ず考えるべきこともある。
疑うためではない。
納得するためである。
セミナーは、
契約する場所ではない。
学ぶ場所である。
吾輩は猫である。
不動産は持たぬ。
だが、
安心して眠れる場所の価値は知っている。
不動産セミナーとは、
夢を買う場所ではなく、
未来を自分の頭で考えるための入口なのだ。
うまい話
飛びつく前に
ひと呼吸