【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―喫茶店の猫 編―

2026年4月5日

吾輩は猫である ―喫茶店の猫 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

扉が開くたび、
鈴が鳴る。
外の喧騒が一瞬入り、
すぐに静けさへ戻る。

人間はここを、
喫茶店と呼ぶ。

席は埋まり、
言葉は控えめ。
湯気が立ち、
時間が少し遅くなる。

吾輩は、
窓際にいる。
日差しがやわらかく、
人の流れも見える場所だ。

客はそれぞれ、
違う理由で座る。
考える者、
休む者、
何かを待つ者。
だが、
誰も急がない。

珈琲は黒く、
会話は淡い。
濃いものと薄いものが、
ちょうどよく混ざる。

店主は多くを語らぬ。
だが、
一杯の温度は揺らがない。
それが、この場所の
軸である。

吾輩は思う。
良い場所とは、
何も起きないことが
許される場所だと。

何もせず、
ただ座る。
それだけで
価値がある。

やがて、
客は静かに立ち、
また一人分の空間が戻る。
鈴が鳴り、
日常が出入りする。

吾輩は猫である。
注文はしない。
だが、
この空気は気に入っている。
喫茶店とは、
時間を少しだけ
丁寧に扱う場所なのだ。


鈴ひとつ
出入りするのは
時の客


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gonta

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