吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫とマンション 編―

2025年9月20日

吾輩は猫である ― 猫とマンション 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

吾輩の住まいは高層マンション。
地上を駆け回る猫に比べれば不自由かと思いきや、
ここにも独特の面白さがある。

まず、窓からの眺めだ。
鳥は小さな点となり、
車は箱庭の玩具のよう。
吾輩は毎日、天空から世界を見下ろしている気分である。

だが、マンション暮らしには掟がある。
廊下に勝手に出てはならず、
夜中に大声で鳴けば隣から苦情が飛ぶ。
しっぽを高く掲げて歩くにも、
人間のルールをわきまえねばならぬ。

それでも、上下左右に暮らす人々の気配は、
退屈を紛らわせる。
ピアノの音、子どもの笑い声、
そしてどこからか漂う焼き魚の匂い。
壁越しに感じる生活の温もりは、
吾輩にとって大きな庭のようなものだ。

時に思う。
マンションとは一つの大きな箱庭。
人も猫も共に棲み、互いに距離を保ちながら
支え合って生きる小さな社会である、と。

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この高層の巣から見える空は広く、
吾輩の心を自由にしてくれる。

高層に 空をつかんで 昼寝かな


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gonta

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