吾輩は猫である。名はまだない。
このところ、飼い主がテレビの前でしきりに言っている。
「チケット、当たった!」
どうやら“大阪・関西万博”という催しに行くらしい。
そこには“ミャクミャク”なる不思議な生き物がいるそうだ。
吾輩も写真で見た。
赤と青がぐにゃりと混じり、
目がいくつもついたその姿。
初めは少し怖かったが、
よく見ると、どこか懐かしい。
――まるで人と猫と自然の命が
一つに溶け合ったような、不思議な形をしている。
飼い主は言う。
「人間の知恵と未来が集まる場所なんだ」
なるほど、人は集まり、語り、築こうとする。
だが吾輩に言わせれば、
未来とは“つくる”よりも“育てる”ものだ。
ミャクミャクもまた、誰かの祈りが
形になった存在なのだろう。
会場の模型を見ながら、飼い主がつぶやいた。
「うまくいくといいな」
吾輩はしっぽを一振りした。
希望とは、成功よりも続いていく勇気のことだ。
吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この島国のどこかで、
確かに“命のミャク”は脈打っている。
未来とは 夢をつなぐ手 ぬくもりで