【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―七沢温泉 編―

2026年6月14日

吾輩は猫である ―七沢温泉 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

山の空気は、
少し遅い。
街の音は薄れ、
風だけが残る。

人間はここを、
七沢温泉
と呼ぶ。

急ぐ者ほど、
湯に浸かると静かになる。
肩の力が抜け、
言葉も少なくなる。

熱い湯は、
何かを足すわけではない。
ただ、
余計なものを緩めていく。

吾輩は思う。
休むとは、
止まることではないと。

張り詰めたものを、
元へ戻すこと。
それが、
本当の回復である。

人間は、
常に進もうとする。
成果、
予定、
次の目標。

だが、
緩めねば、
折れる。

温泉は、
答えを出さぬ。
ただ、
整える。

熱、
静けさ、
間。
それだけで、
十分なこともある。

湯から上がれば、
景色は変わらぬ。
だが、
見る側が少し変わる。

吾輩は猫である。
湯には浸からぬ。
だが、
緩む時間の価値は知っている。
七沢温泉とは、
頑張ることを
一度手放す場所なのだ。


湯に沈み
張った心も
ほどけけり


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gonta

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