【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―ルンバ階段から落ちる 編―

2026年8月21日

吾輩は猫である ―ルンバ階段から落ちる 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

床の上を、
丸いものが動いている。

音もなく、
いや、少し音を立てながら、
部屋の隅々まで進んでいく。

人間はこれを、
ルンバと呼ぶ。

実に働き者である。

吾輩が寝ていても、
人間が出かけていても、
黙々と床を掃除する。

猫の毛も、
埃も、
食べこぼしも、
容赦なく吸い込む。

吾輩は思う。

便利とは、
こういうものなのだろうと。

だが、
ある日。

ルンバは、
階段の方へ向かった。

人間は言う。

「そこは大丈夫だろう。」

機械には、
落ちないための仕組みがあるらしい。

なるほど。

吾輩も少し安心する。

だが、
機械とて万能ではない。

段差。

センサー。

床の状態。

ほんの小さな条件が重なれば、
予想外は起こる。

そして――

ガタン。

吾輩は、
耳を立てる。

人間は、
走る。

階段の下には、
先ほどまで働いていた丸い者が、
静かに横たわっている。

人間は言う。

「まさか落ちるとは。」

吾輩は思う。

その「まさか」が、
事故というものではないかと。

便利な機械ほど、
人間は任せたくなる。

自動だから。

センサーがあるから。

AIだから。

きっと大丈夫だから。

だが、
最後の「大丈夫」を決めるのは、
やはり人間である。

階段に柵を置く。

危ない場所を避ける。

動かす前に、
少し確認する。

ほんの一手間で、
防げることは多い。

吾輩は猫である。
階段から落ちぬよう、
足元はよく見る。

ルンバにも、
少しくらい猫の慎重さを
教えてやりたい。

便利とは、
任せきることではない。

安心して任せられるよう、
人間が最後に目を配ることなのだ。


自動でも
最後の一歩
人が見る

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