吾輩は猫である。
名前はまだない。
上る時は、
先が見えぬ。
ただ、
足元を進むしかない。
人間はこれを、
坂上と呼ぶ。
途中では、
苦しい。
息も上がり、
何度か止まりたくなる。
だが、
上に着いて初めて、
見える景色がある。
吾輩は思う。
坂とは、
登っている最中には
意味がわかりにくいものだと。
努力も、
継続も、
その場では、
ただ重い。
だが、
振り返った時、
距離になっている。
人間は、
結果だけを見たがる。
だが、
本当に価値があるのは、
上る途中で
何を積み重ねたかだ。
速い者もいる。
ゆっくりな者もいる。
途中で休む者もいる。
それでも、
自分の足で上ったなら、
意味は残る。
猫は、
無理に駆け上がらぬ。
疲れれば止まり、
景色を見て、
また進む。
それで、
よい。
吾輩は猫である。
頂を競わぬ。
だが、
上った者だけが知る風は知っている。
坂上とは、
苦しさの先に
静かな景色が待つ場所なのだ。
登るほど
静かな風が
待っている