吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 三体問題 編―

2025年9月30日

吾輩は猫である ― 三体問題 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

昼下がりの縁側で、飼い主が分厚い本を開いていた。
「三体問題」とやらに頭を抱えている。
太陽と地球と月――三つの天体の動きを正確に解くのは、
人間にとっても難題らしい。

吾輩はしっぽを揺らしながら思う。
猫の世界にも三体問題はある。
飯をめぐる猫三匹の睨み合い。
一皿に寄れば争いが起き、
互いに譲らねば毛が逆立つ。
結局、誰が先に食べるかは、数式ではなく気分次第。

人間は計算に挑むが、
自然はあまりに自由で、完全には読めぬ。
吾輩にしても、昼寝の場所を決めるのは
太陽の光、風の流れ、そして気まぐれの三つの要素。
これもまた、立派な三体問題であろう。

飼い主はため息をつき、本を閉じた。
だが吾輩は見ていた。
空に浮かぶ月が、静かに太陽と地球の間を渡ってゆくのを。
解けぬ謎も、眺めれば美しい。
それが宇宙の真理なのかもしれぬ。

吾輩は猫である。名はまだない。
ただ、夜空を仰ぎながら思う。
この小さき身に映る星々もまた、
永遠の難問を抱えているのだと。

三つ揺れ 答えはなくも 月は照る


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gonta

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