吾輩は猫である。
名前はまだない。
最初の一歩は、
静かである。
派手でもなく、
確かでもない。
人間はそれを、
初心と呼ぶ。
何も知らぬ。
だからこそ、
よく見る。
よく触れ、
よく迷う。
無駄に見える動きが、
多い。
だが、
そのすべてが、
土台になる。
吾輩は思う。
慣れとは、
便利であり、
同時に危ういと。
速くなる。
迷わなくなる。
だが、
見なくなる。
初心の目は、
細部を拾う。
違和感を感じ、
小さな差に気づく。
それは、
後になっても
完全には戻らぬ。
だから、
忘れぬことが大事だ。
慣れた後に、
あえて遅くする。
あえて疑う。
あえて確かめる。
それが、
技を深くする。
吾輩は猫である。
常に初めてではない。
だが、
初めての感覚は持っている。
初心とは、
未熟さではなく、
精度の源なのだ。
慣れの中
一歩戻れば
道深し