吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 会社が好きすぎる猫編 ―

2025年7月8日

吾輩は猫である ― 会社が好きすぎる猫編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。
だが「社ネコ」と呼ばれている(らしい)。

きっかけはテレワーク。
飼い主が毎日パソコンを開き、電話に出たり、
「MTG入ります」とか言って静かになったり。
その横にぴたりと寄り添うのが、吾輩の日課だった。

会議中に顔を出せば「かわいいですね」と評判になり、
画面越しに“社員証つけて”という声もあった。
まさに吾輩、社風の一部と化していたのである。

だがある日、飼い主が言った。
「明日からは出社よ。会社、行ってきます」

……なぬ?
吾輩はどうなる?
職場の椅子も、デスクのにおいも知らぬまま、置いていかれるのか。

翌朝、スーツ姿の飼い主にすがるように足にまとわりついたが、
あっさりドアが閉まった。

日中の部屋は、音のない会議室のように静かだった。
キーボードのカタカタ音も、
「ちょっと黙っててね」の声も、ない。

仕事より そばにいること 働きたし

思えば、吾輩は“会社”そのものが好きというより、
働く飼い主と一緒にいるのが好きだったのだ。

夕方、帰宅した飼い主のかばんに頭を突っ込み、
書類のにおいを確かめる。
――やっぱり、現場の空気は違う。

「明日は在宅だから、一緒にいられるよ」
その言葉に、尾を一振りして応えた。


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gonta

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