吾輩は猫である。
名前はまだない。
朝の空気が、
少しだけ軽い。
同じ道、
同じ部屋、
だが、
人間の歩き方が違う。
人間はこれを、
四月一日と呼ぶ。
始まりの日らしい。
新しい名札、
新しい席、
新しい挨拶。
言葉の端に、
少しの緊張が混じる。
昨日の続きでありながら、
どこか別の一日。
吾輩は思う。
始まりとは、
完全な新しさではないと。
積み重ねの上に、
一枚だけ
新しい紙を重ねること。
それが、
始まりの正体だ。
人間は、
変わろうとする。
昨日よりも、
少し良く、
少し前へ。
だが、
すべてを変える必要はない。
変えぬものがあるから、
変わることができる。
桜は、
急に咲くわけではない。
見えぬところで、
準備をしていた。
今日という日は、
その結果に過ぎぬ。
吾輩は猫である。
新年度は持たぬ。
だが、
変化の匂いはわかる。
四月一日とは、
続きの中に
少しだけ意志を置く日なのだ。
新しき
顔の奥にも
昨日あり