吾輩は猫である。
名前はまだない。
静かな盤の上で、
すべてが決まる。
音はほとんどない。
だが、
内側は激しい。
人間はこれを、
棋士と呼ぶ。
一手に、
時間をかける。
読み、
迷い、
選び、
置く。
それだけで、
世界が変わる。
吾輩は思う。
棋士とは、
孤独な職であると。
誰にも代われぬ。
誰も助けぬ。
最後は、
自分で決める。
盤の外では、
多くを語らぬ。
だが、
盤の上では、
すべてが現れる。
性格も、
癖も、
弱さも。
隠せぬ。
勝てば、
称えられる。
負ければ、
静かに引く。
だが、
どちらでも、
次の一局は来る。
続けること。
それ自体が、
生き方である。
吾輩は猫である。
盤は持たぬ。
だが、
一手の重さは知っている。
棋士という生き方とは、
答えのない中で、
選び続けることなのだ。
一手ごと
己を置いて
進みけり