【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―初めての洗車 編―

2026年6月20日

吾輩は猫である ―初めての洗車 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

突然、
大きな音がした。
水が流れ、
泡が広がり、
外の景色が見えなくなる。

人間はこれを、
洗車と呼ぶ。

初めての時は、
少し驚く。
いや、
かなり驚く。

巨大な布が近づき、
車を包み、
左右から揺らす。
敵かと思った。

だが、
人間は平然としている。
むしろ、
少し嬉しそうですらある。

吾輩は思う。
慣れている者と、
初めての者では、
同じ出来事でも意味が違うと。

知っていれば、
ただの洗浄。
知らなければ、
ほぼ災害である。

音、
振動、
水圧。
すべてが、
非日常。

だが、
終わってみれば、
車は妙に輝いている。

空も映り、
光も柔らかい。
なるほど、
人間が嬉しそうな理由も、
少しわかる。

初めてとは、
怖さと発見が
同時に来るものだ。

吾輩は猫である。
泡は好まぬ。
だが、
整った後の気持ち良さは知っている。
初めての洗車とは、
驚きながら
「慣れ」が始まる瞬間なのだ。


泡の中
驚き越えて
光り出す


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編