吾輩は猫である。
名前はまだない。
突然、
大きな音がした。
水が流れ、
泡が広がり、
外の景色が見えなくなる。
人間はこれを、
洗車と呼ぶ。
初めての時は、
少し驚く。
いや、
かなり驚く。
巨大な布が近づき、
車を包み、
左右から揺らす。
敵かと思った。
だが、
人間は平然としている。
むしろ、
少し嬉しそうですらある。
吾輩は思う。
慣れている者と、
初めての者では、
同じ出来事でも意味が違うと。
知っていれば、
ただの洗浄。
知らなければ、
ほぼ災害である。
音、
振動、
水圧。
すべてが、
非日常。
だが、
終わってみれば、
車は妙に輝いている。
空も映り、
光も柔らかい。
なるほど、
人間が嬉しそうな理由も、
少しわかる。
初めてとは、
怖さと発見が
同時に来るものだ。
吾輩は猫である。
泡は好まぬ。
だが、
整った後の気持ち良さは知っている。
初めての洗車とは、
驚きながら
「慣れ」が始まる瞬間なのだ。
泡の中
驚き越えて
光り出す