吾輩は猫である。
名前はまだない。
若い頃のようには、
跳ばなくなる。
走る距離も短くなり、
眠る時間が増える。
人間はこれを、
老いと呼ぶ。
体は、
少しずつ変わる。
段差をためらい、
音にも敏くなる。
だが、
心まで弱くなるわけではない。
吾輩は思う。
老猫とは、
「できなくなった猫」ではないと。
長く生き、
多くを見て、
静かな時間を覚えた猫だ。
若い猫は、
勢いで進む。
だが、
老猫は、
無駄を知っている。
急がず、
競わず、
暖かい場所を選ぶ。
それは、
衰えではなく、
経験の形でもある。
人間は、
若さを眩しく見る。
だが、
長く共に過ごした時間には、
別の重みがある。
撫でる手は、
少し優しくなる。
呼ぶ声も、
少し静かになる。
その変化を、
猫はちゃんと感じている。
吾輩は猫である。
いつか老いる。
だが、
最後まで大事にしてほしいと思っている。
シニア老猫ホームとは、
弱くなった命を預ける場所ではなく、
長く生きた命を
静かに包む場所なのだ。
老いてなお
ぬくもり求め
眠りけり