【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―チケット当選 編―

2026年8月1日

吾輩は猫である ―チケット当選 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

人間は、
一通の知らせで、
天にも昇る気持ちになることがある。

「ご当選おめでとうございます。」

その文字を見ただけで、
顔がほころぶ。

吾輩は思う。

当たったのは、
一枚のチケット。

だが、
人間が本当に手に入れたのは、
その先に待つ時間なのだ。

会いたかった人。

見たかった景色。

胸を躍らせる一日。

チケットは、
紙でも、
画面の中の数字でもない。

未来への約束なのである。

猫には、
抽選はない。

お気に入りの窓辺も、
昼寝の場所も、
早い者勝ちだ。

だからこそ、
人間が小さく飛び跳ねて喜ぶ姿を見ると、
少しうらやましくもある。

だが、
当選は終わりではない。

その日まで、
何を着ようか。

何を話そうか。

誰と行こうか。

そんな時間さえ、
もう楽しい。

吾輩は猫である。
当選メールは届かぬ。
だが、
嬉しそうな主人を見ると、
吾輩まで尻尾が少し上を向く。
チケット当選とは、
幸運を手に入れることではなく、
待つ時間まで幸せに変えてくれる贈り物なのだ。


当選の
知らせひとつで
秋を待つ


  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編