吾輩は猫である。
名前はまだない。
人間は、
一通の知らせで、
天にも昇る気持ちになることがある。
「ご当選おめでとうございます。」
その文字を見ただけで、
顔がほころぶ。
吾輩は思う。
当たったのは、
一枚のチケット。
だが、
人間が本当に手に入れたのは、
その先に待つ時間なのだ。
会いたかった人。
見たかった景色。
胸を躍らせる一日。
チケットは、
紙でも、
画面の中の数字でもない。
未来への約束なのである。
猫には、
抽選はない。
お気に入りの窓辺も、
昼寝の場所も、
早い者勝ちだ。
だからこそ、
人間が小さく飛び跳ねて喜ぶ姿を見ると、
少しうらやましくもある。
だが、
当選は終わりではない。
その日まで、
何を着ようか。
何を話そうか。
誰と行こうか。
そんな時間さえ、
もう楽しい。
吾輩は猫である。
当選メールは届かぬ。
だが、
嬉しそうな主人を見ると、
吾輩まで尻尾が少し上を向く。
チケット当選とは、
幸運を手に入れることではなく、
待つ時間まで幸せに変えてくれる贈り物なのだ。
当選の
知らせひとつで
秋を待つ