【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―猫探偵 編―

2026年8月27日

吾輩は猫である ―猫探偵 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

何かが、
なくなった。

人間は慌てる。

鍵がない。

書類がない。

昨日ここに置いたはずの物が、
見当たらない。

人間はこれを、
事件と呼ぶ。

吾輩は思う。

事件とは、
大げさなものばかりではないと。

少しの違和感。

いつもと違う匂い。

動かした覚えのない物。

誰かの足音。

そこに、
手がかりはある。

猫は、
よく見る。

音を聞き、
匂いを嗅ぎ、
少し離れて様子をうかがう。

すぐには飛びつかぬ。

思い込みほど、
捜査を曇らせるものはない。

人間は、
「きっとここだ」と決めつける。

だが、
本当にそこにあるとは限らぬ。

だから、
一度戻る。

最後に見た場所。

最後に触った時間。

誰がいたか。

何が変わったか。

順番にたどれば、
案外、答えは近くにある。

吾輩は思う。

探偵とは、
特別な推理力を持つ者ではない。

小さな変化を、
見逃さぬ者なのだ。

そして、
わからない時に、
わかったふりをしない者でもある。

吾輩は猫である。
虫一匹の動きでも、
長く見続けることができる。

猫探偵とは、
派手に犯人を当てる者ではない。

急がず、
決めつけず、
静かに事実を積み重ねる者なのだ。


謎ひとつ
急がず見れば
尾が見える

  • この記事を書いた人

gonta

-【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編