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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/4/9

吾輩は猫である ―語られる側 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 人は、語る。出来事を、他人を、そして時に、自分を。 だが、語られる側に立つことは、あまりない。 吾輩は思う。語るより、語られる方が難しいと。 語る者は、選べる。言葉を、順序を、強調する部分を。 だが、語られる者は、選べぬ。どこを切り取られ、どの角度で見られるかを。 同じ一日でも、語る人が違えば、まったく別の物語になる。 優しさは、甘さに変わり、慎重さは、遅さと呼ばれる。静けさは、無関心と誤解される。 言葉は、形を与える。だが同時に、削りもする。 吾輩は、ただそこにいる。何 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/4/9

吾輩は猫である ―ウィキッド 編(物の見方が変わる)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 同じ出来事でも、見る場所が違えば、意味は変わる。 人間はこれを、ウィキッドと呼ぶ。 善と悪は、最初から決まっているわけではない。語られ方で、色がつく。 ある者は、正義として語られ、ある者は、悪として記される。だが、どちらにも理由がある。 吾輩は思う。視点とは、なかなか厄介なものだと。 高い場所から見れば、全体が見える。低い場所から見れば、細部が見える。どちらも正しく、どちらも足りぬ。 人間は、物語を単純にしたがる。わかりやすく、整理された形で。だが、現実はそうはいかぬ。 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫芸人 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 夜になると、人間は集まり、一人の言葉に耳を傾ける。笑い声が、波のように広がる。 人間はこれを、芸と呼ぶ。 芸人は、言葉で場を動かす。間を取り、声を乗せ、一瞬で空気を変える。 吾輩は思う。笑いとは、なかなか高度な技術だと。 猫にも、芸はある。転びそうで転ばぬ動き、無関心から急に甘える切り替え、予想を裏切る振る舞い。 だが、狙ってはやらぬ。 芸人は、狙う。計算し、組み立て、外すことすら織り込む。 猫は、自然に外す。だから、時に面白い。 笑いとは、完璧さの崩れに宿る。少しのズレ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―ゴールデンカムイに猫 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 雪の匂いは、すべてを隠す。足跡も、音も、昨日の気配さえ。 人間はこの物語を、ゴールデンカムイと呼ぶ。 金塊を巡り、人が走り、戦い、奪い合う。 極寒の地で、生きることは、それだけで試練だ。 吾輩は思う。猫がそこにいたなら、どうするかと。 まず、無駄に走らぬ。体力は、最も貴重な資源だ。 次に、暖を確保する。風を避け、雪を読み、最小の動きで最大の安定を得る。 獲物は、追わぬ。待つ。来る場所を知り、確実に仕留める。 戦うことは、最後の手段だ。生き延びることが、第一である。 人は、 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫、主役を取り返す 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、主役の位置が、少しだけ揺らいでいる。 人間は、あちらを見て笑い、こちらを見ては通り過ぎる。視線の中心が、微妙にずれているのだ。 犬スタンド。写真。新しい何か。 なるほど。世は移ろう。 だが、主役とは、与えられるものではない。自然に集まるものだ。 吾輩は、静かに動く。 音を立てず、無理に割り込まず、しかし、確実に視界の中心へ。 座る。ただ、そこに座る。 それだけで、空気が変わる。 人間の手が止まり、視線が戻り、言葉が少し遅れる。 「……やっぱり、こっちだな」 猫は、奪 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―犬スタンド 編(猫はちょっとヤキモチ編)―

吾輩は猫である。名前はまだない。 部屋に、新しい気配が増えた。人間は嬉しそうに、一枚の板の前で立ち止まる。 そこには、まいやんと、犬がいる。 ……犬である。 動かぬ。鳴かぬ。ただ、そこにいる。 人間はこれを、犬スタンドと呼ぶらしい。 妙だ。 撫でる。笑う。写真を撮る。そのたびに、表情がやわらぐ。 吾輩は、少し離れた場所に座る。近づく理由はあるが、近づかぬ理由もある。 猫は、比べぬ。だが、感じはする。 あの笑顔が、自分に向いた時と、少し似ていることを。 犬は、寄り添う存在。猫は、寄り添わせる存在。 どちらも ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫パンチ 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 静かな空気の中で、一瞬だけ風が切れる。音はほとんどない。だが、確かに何かが起きた。 猫パンチである。 速い。無駄がない。そして、だいたい当たる。 人間は、力を込めたがる。強く、大きく、確実に。 だが、猫は知っている。本当に必要なのは、速さと間合いだ。 近すぎれば遅れ、遠すぎれば届かぬ。ちょうどよい距離で、一瞬を捉える。 猫パンチは、攻撃ではない。確認である。 そこに何があるのか。動くのか、危ないのか、無害なのか。 一撃で、情報を得る。 だから、強くない。だが、正確だ。 人 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫発電 VS ハムスター発電 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、人間は「発電」を語る。持続可能だの、再生可能だの、なかなか忙しい。 そこで出てきたのが、動物発電である。 一方は、ハムスター。車輪を回し、ひたすら走る。動けば動くほど、力になる。 もう一方は、吾輩。猫発電である。 ……動かぬ。 人間は期待する。走れ、回せ、発電せよと。だが、猫は知っている。 効率とは、動く量ではない。無駄を減らすことだ。 ハムスターは、走り続ける。見事である。だが、止まれば発電は止まる。 猫は、動かぬことで消費を抑える。必要な時だけ動き、それ以外は蓄 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―喫茶店の猫 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 扉が開くたび、鈴が鳴る。外の喧騒が一瞬入り、すぐに静けさへ戻る。 人間はここを、喫茶店と呼ぶ。 席は埋まり、言葉は控えめ。湯気が立ち、時間が少し遅くなる。 吾輩は、窓際にいる。日差しがやわらかく、人の流れも見える場所だ。 客はそれぞれ、違う理由で座る。考える者、休む者、何かを待つ者。だが、誰も急がない。 珈琲は黒く、会話は淡い。濃いものと薄いものが、ちょうどよく混ざる。 店主は多くを語らぬ。だが、一杯の温度は揺らがない。それが、この場所の軸である。 吾輩は思う。良い場所と ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫珈 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 朝の部屋に、苦い香りが立つ。湯が落ち、音は小さく、空気だけが変わる。 人間はこれを、珈琲と呼ぶ。 黒い液体に、多くを求める。目を覚まし、気持ちを整え、一日を始めるための儀式らしい。 吾輩は、少し距離を取る。香りは良いが、味は知らぬ。だが、その時間の静けさは知っている。 淹れるという行為は、急がぬ。量り、注ぎ、待つ。その一つ一つが、整える動きだ。 人間は、忙しいほど丁寧に淹れる。逆のようでいて、理にかなっている。 苦味とは、嫌われるものではない。輪郭を作り、余韻を残す。甘さ ...