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【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―まいやんカレンダ2026 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 壁に、新しい暦が掛けられた。紙はまだ固く、折り目も新しい。 人間はそれを、まいやんカレンダ2026と呼ぶ。 月が変わるごとに、ページがめくられる。同じ人でありながら、同じではない表情。 時間とは、進むだけでなく、重なるものらしい。 人間は、予定を書き込み、日付に意味を与える。だが、カレンダそのものは、ただ静かに日々を並べている。 美しさとは、変わらぬことではない。変わりながら、整っていることだ。 猫は、暦を持たぬ。だが、朝の光と、夜の気配で、日を知る。 それでも、一枚の紙 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―猫シェアハウス編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 最近、家の中に猫が増えた。理由は知らぬ。だが、皿は増え、寝床も増えた。 人間はこれを、シェアハウスと呼ぶらしい。 猫は、群れぬ。だが、共にいることはある。 距離を保ち、場所を分け、干渉しすぎぬ。それで、だいたいうまくいく。 窓辺は人気だ。日当たりは、早い者勝ち。だが、長く居座ると、無言の圧が来る。 皿の順番、水の場所、寝る位置。すべてに、言葉なきルールがある。 破れば、空気が変わる。守れば、何も起きない。 何も起きないことが、最も良い状態である。 人間は、仲良くすることを ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/16

吾輩は猫である ―戦争下の猫 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 街の音が、少し違う。遠くで低く響き、近くでは人の声が減る。 人間はこれを、戦争と呼ぶ。 昨日まで開いていた店は、半分閉じ、灯りは早く消える。空を見上げる時間が、増えた。 猫は、理由を知らぬ。国も、思想も、境界線も持たない。 それでも、変化はわかる。 餌は減り、足音は急ぎ、人の目には余裕がない。 猫は、静かに場所を変える。危うい通りを避け、安全な影を選ぶ。生き延びるとは、正しさよりも柔らかさである。 人は戦い、勝敗を語る。だが、瓦礫の上ではどちらの足跡も同じだ。 夜になると ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/9

吾輩は猫である ―AIトレーダー 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 机の上に、画面が増えた。数字が流れ、線が上下し、人間の眉が動く。 人間はこれを、トレードと呼ぶ。 最近は、人が考える前に、機械が考えるらしい。AIトレーダーという賢い仕組みだ。 市場は速い。一瞬で変わり、一瞬で消える。人の感情より、機械の計算が速い。 だが、数字の裏には、人がいる。 恐れ、欲し、迷い、期待する。その揺れが、値段になる。 AIは、それを学ぶ。過去を読み、確率を積み、最も合理的な一手を選ぶ。 囲碁のように、先を読む。だが、市場は盤面ではない。人の気分が、時々石 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/9

吾輩は猫である ―春分の日 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 朝の光が、少し長くなった。窓辺の温度が、昨日より柔らかい。 人間はこの日を、春分の日と呼ぶ。 昼と夜が、同じ長さになるらしい。光と影が、一度だけ釣り合う日だ。 猫にとって、それはなかなか良い日である。 長すぎる夜も、短すぎる昼も、どちらも少し疲れる。 均衡とは、心地よいものだ。 人間はこの日、祖先を思い、季節の境目を感じ、静かに手を合わせる。 冬は去り、春が来る。それは急がず、しかし確実に進む。 庭の空気も、風の匂いも、ほんの少し変わった。 吾輩は、窓辺で丸くなる。陽は柔 ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/9

吾輩は猫である ―トリミング 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 今日は、少し様子が違う。ブラシが出て、ハサミが光り、人間の動きが妙に慎重だ。 どうやら、トリミングらしい。 猫は本来、自分で整える。毛づくろいという立派な技を持っている。 だが、人間は時々手を出したくなるらしい。 ブラシが入る。毛がふわりと舞う。嫌ではない。だが、好みでもない。 整えるとは、難しいものだ。 やりすぎれば、不自然になる。足りなければ、手入れにならぬ。 人間は、毛の量を見て、形を見て、慎重にハサミを入れる。 その姿は、少しだけ庭師に似ている。 自然を整えるのは ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/9

吾輩は猫である ―囲碁 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 机の上に、碁盤が置かれる。黒と白の石が、静かに並ぶ。 音は、「コツ」と一つ。それだけで、空気が変わる。 人間はこれを、囲碁と呼ぶ。 将棋のように、駒は動かぬ。取り合いはあるが、戦いというより陣取りである。 吾輩は、盤の横に座る。黒石は夜の色、白石は昼の色。どちらも、丸い。 丸いものは、転がしたくなる。だが、今日は触らぬ。人間が妙に真剣だからだ。 囲碁とは、奪う遊びではない。広げる遊びだ。 相手を消すより、自分の地を整える。急がず、焦らず、盤はゆっくり埋まっていく。 一手の ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/22

吾輩は猫である ―技術士口頭試験 不合格 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 春の終わりに、一つの結果が届く。紙の上には、短い評価。 人間はこれを、技術士口頭試験の結果と呼ぶ。 合格という二文字は、遠くない場所にある。番号も、ほんの少し違うだけだ。 隣の列には、同じ数字が並ぶ。0000E0000。その人は、合格した。 吾輩は思う。たった一文字が、重い。 EとM。それだけの違いで、春の色が少し変わる。 机の上には、筆記試験の記憶。書いた時間、積み重ねた経験、考えた答え。 それらは、消えない。 だが、評価には丸と印が並ぶ。コミュニケーション。リーダーシ ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/8

吾輩は猫である ―技術士二次試験 合格発表 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 春先になると、人間は少し落ち着かなくなる。机の上の参考書は閉じられ、画面の前に、静かな緊張が残る。 人間はこれを、合格発表と呼ぶ。 長い時間をかけて、書き、考え、直し、また書く。紙の上に、経験を並べる試みである。 試験とは、知識を問うようでいて、実は姿勢を問う。どこまで考え、どこまで責任を引き受けるか。 結果の文字は、短い。だが、そこに至る道は長い。 喜ぶ者もいれば、静かに画面を閉じる者もいる。どちらも、同じ時間を歩いてきた。 合格とは、終わりではない。むしろ、背負う名が ...

【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

2026/3/8

吾輩は猫である ―猫社会の契約 編―

吾輩は猫である。名前はまだない。 猫の世界には、契約書がない。署名も、印鑑も、長い条文もない。 それでも、約束はある。 縄張りは、足音で伝わる。距離は、視線で決まる。近づく者も、退く者も、言葉を使わぬ。 人間は、契約を紙に書く。猫は、空気に書く。 角を曲がる時、誰が先に進むか。屋根の上で、どこまで近づくか。互いの尾が、その境界を知っている。 破れば、すぐわかる。声が荒れ、毛が立ち、関係は崩れる。 守れば、平穏が続く。争いは減り、昼寝の時間が増える。 契約とは、拘束ではない。互いの自由を壊さぬための静かな線 ...