吾輩は猫である。
名前はまだない。
提灯が灯る。
太鼓が鳴り、
人が輪になる。
人間はこれを、
盆踊りと呼ぶ。
上手い者もいれば、
少し間違える者もいる。
それでも、
誰も気にしない。
同じ輪の中で、
同じリズムに合わせる。
それが、
大切らしい。
吾輩は思う。
盆踊りとは、
競うための踊りではないと。
揃えることより、
集まること。
見せることより、
一緒に楽しむこと。
輪の中では、
子どもも、
大人も、
久しぶりに帰ってきた人も、
みな同じ。
故郷を離れた者も、
この日だけは戻ってくる。
踊りは、
昔から変わらぬ。
だからこそ、
人は安心する。
猫もまた、
祭りの夜は少しだけ忙しい。
屋台の匂いに誘われ、
提灯の灯りの下を歩き、
太鼓の音に耳を立てる。
夏は、
こうして過ぎていく。
吾輩は猫である。
踊りは得意ではない。
だが、
人が笑顔で輪になる景色は好きだ。
盆踊りとは、
先祖を偲び、
今を生きる人が一つの輪になる、
日本の夏の風景なのだ。
輪になれば
心も踊る
夏の夜