吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 猫の嫉妬 編―

2025年10月13日

吾輩は猫である ― 猫の嫉妬 編―

吾輩は猫である。名はまだない。

このところ、飼い主の膝の上を新入りの子猫が占領している。
白くて小さく、鳴き声は妙に甘い。
吾輩がそこに座ろうとすると、
「だめよ、今この子がいるの」と言われた。

胸の奥で、何かがチリチリと燃えた。
食事の時間も、つい皿をひっくり返してしまう。
飼い主は困った顔をするが、
それでも目はあの子猫に向いたままだ。

嫉妬――人間はそう呼ぶらしい。
猫にとっては、ただ“好きな相手を取られた”という単純な痛みである。
吾輩は夜の窓辺に座り、
月明かりに映る自分の影を見つめた。

ふと、飼い主がやってきて、
吾輩の頭をそっと撫でた。
「ごめんね、あなたも大事なのよ」
その一言で、胸のもやがすうっと消えていった。

吾輩は猫である。名はまだない。
けれどその瞬間、ようやくわかった。
嫉妬とは、愛されたいという願いの裏返しなのだと。

月の夜 独りの影も ぬくもりに


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gonta

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