吾輩は猫である。
出会いには、たいてい理由がない。
ある日、そこにいた。
目が合った。
それだけのことで、関係は始まる。
人はそれを「縁」と呼ぶ。
だが吾輩にとっては、もっと静かなものである。
ただ、同じ時間を少し共有したに過ぎない。
それでも、人は意味を見出す。
出会うべくして出会ったのだと。
そう考えることで、日々は少しだけ整うのだろう。
ならば、それでよい。
出会いがあれば、別れもある。
これもまた、理由ははっきりしない。
いつの間にか距離ができることもあれば、
ある日突然、いなくなることもある。
人はそれを惜しむ。
もう少し何かできたのではないかと。
だが、関係というものは、
常に未完成のまま終わる。
すべてを言い尽くすことも、
すべてを理解し合うことも、
おそらく叶わぬ。
それでもなお、出会いは無駄ではない。
ほんのわずかな時間でも、
そこに何かが確かに存在したのであれば、
それは消えたのではなく、残っている。
形を変えて。
吾輩は猫である。
来ることもあれば、去ることもある。
だが、人よ。
出会ったことまで、消してはならぬ。
別れとは、終わりではない。
ただ、手を離すというだけのことだ。
出会いとは
離すと決めた
手の温度