吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―アイスクリーム食べ歩き 編―

2025年8月13日

吾輩は猫である ―アイスクリーム食べ歩き 編―

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、“アイスの名店”はすべて知っている。

暑い日だった。
道端のアスファルトが肉球を炙るような午後、
吾輩は「アイスクリーム食べ歩き」に出かけた。

まずは商店街の老舗和菓子屋。
店先で出していたのは、抹茶と黒蜜のあいがけソフト
香り高く、まろやか。
舐めるというより、嗅ぐに近い至福である。

次に訪れたのは駅前の観光案内所の脇。
ひっそりとキッチンカーが停まり、
そこには「トマトジェラート」と書かれていた。
トマト…?と眉をひそめたが、
意外と酸味が効いていて夏向きだった。

路地裏のカフェでは、
猫を模したクッキーが刺さった“ねこアイス”があった。
若い女子たちが写真を撮る中、
吾輩はその隙を突いて、カリカリ部分を一口失敬した。

汗だくの飼い主が追いついてきた頃には、
吾輩はもう五店舗目。
口の中が冷気の万華鏡である。

飼い主は言った。
「猫舌じゃなかったのか?」

違う。吾輩は猫である。
だが“アイス猫”でもあるのだ。

日も暮れて、最後に寄ったのは港の近くのジェラート屋。
海風と潮の香りと、
ラムレーズンの記憶がふわりと重なる。

食べ終えて、吾輩はふと気づく。
この町には、まだまだ知らない味がある。
それを探す旅は、
冷たくて、甘くて、ちょっとだけ切ない。

そして、今日の一句。

ご当地の 味を制すは 鼻と舌


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gonta

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