【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―可愛い来客 編―

2026年9月3日

吾輩は猫である ―可愛い来客 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

玄関の向こうで、
いつもと違う声がする。

足音も、
匂いも、
少し違う。

人間はこれを、
来客と呼ぶ。

吾輩は、
まず離れて見る。

知らぬ者に、
すぐ近づくほど
軽率ではない。

だが、
今日の客は少し違う。

声が柔らかい。

動きがゆっくりしている。

そして何より、
吾輩を見る目が、
妙に嬉しそうである。

人間は言う。

「かわいい。」

吾輩は思う。

それは、
こちらの台詞かもしれぬと。

来客は、
無理に触ろうとしない。

追いかけない。

大きな声も出さない。

ただ、
少し離れた場所から、
吾輩を見ている。

なるほど。

なかなか心得ている。

猫との距離は、
詰めればよいものではない。

待つ。

目を合わせすぎない。

こちらから近づく余白を残す。

それだけで、
警戒は少しずつ薄れる。

吾輩は、
一歩近づく。

匂いを確かめる。

もう一歩。

すると人間たちは、
急に静かになる。

どうやら、
重大な瞬間らしい。

吾輩は思う。

可愛い来客とは、
顔が可愛い者ではない。

こちらの気持ちを待てる者。

相手の距離を尊重できる者。

そんな人間のことではないかと。

やがて、
吾輩は少しだけ近くに座る。

撫でさせるかどうかは、
まだ決めていない。

そこは、
別の話である。

吾輩は猫である。
来客は選べぬ。

だが、
また来てもよいと思える相手なら、
それは少し嬉しい。

可愛い来客とは、
猫を可愛がる人ではない。

猫からも、
ちょっと気に入られる人なのだ。


待つ客に
猫から一歩
近づきぬ

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gonta

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