吾輩は猫である。
名前はまだない。
今日は、
少し様子が違う。
朝から落ち着かず、
箱に入れられ、
見知らぬ場所へ運ばれる。
人間はこれを、
健康診断と呼ぶ。
悪くない。
だが、
好ましくもない。
匂いが違う。
音も違う。
他の気配が、
少しだけ多い。
台の上に乗せられ、
体を触られ、
耳を見られ、
口を開けられる。
逃げぬ。
だが、
納得もしていない。
人間は、
数値を見る。
体重、
心音、
血液。
目に見えぬものを、
見える形にする。
吾輩は思う。
健康とは、
異常がないことではないと。
変化に気づけること。
早く整えられること。
それが、
本当の意味だ。
猫は、
痛みを隠す。
弱さを見せぬ。
だからこそ、
人の目が必要になる。
終われば、
いつもの場所へ戻る。
匂いも、
音も、
見慣れたものに変わる。
少し疲れる。
だが、
それでよい。
吾輩は猫である。
診断は好まぬ。
だが、
整えるための手間は知っている。
健康とは、
気づき続けることなのだ。
嫌な日も
守るためなら
良しとする