吾輩は猫である。名はまだない。
だが今夜ばかりは、コードネーム「シャドウ」。
任務はただ一つ――飼い主の焼き魚を、無傷で確保せよ。
作戦開始は、21時12分。
飼い主が風呂へ突入したタイミングを見計らい、
吾輩は静かに着地音ゼロで台所へ侵入。
障害①:キッチンの腰高カウンター。
滑る。高い。だがキャットタワーで鍛えた跳躍力で無音突破。
障害②:焦げた秋刀魚から発せられる匂い。
強すぎる…!
鼻を鳴らせば位置がバレる。ここは平常心、深呼吸。
だが最大の難関は、
あの“赤外線センサー”――そう、見張り役のルンバである。
夜間モードで静かに稼働中。こやつ、意外と賢い。
タイミングを見計らい、床を一気にダッシュ。
皿のふちまで到達。成功かと思いきや――
「こらああああぁ!!」
飼い主、想定外の早風呂帰還。
まさかのバスタオル姿でキッチンに突入。
吾輩、即座に高台に退避。
サンマは…尾だけくわえている。成功率63%の回収。
猫ミッション 成否はともかく 己の誇り
飼い主は呆れつつも、
「映画のスパイより素早いね」と苦笑い。
任務はバレたが、
得られたのは魚の一切れと、スリルと、飼い主との“攻防の絆”。
吾輩は今夜もベッドの下で身を潜める。
明日もきっと、新たな“作戦”が待っている。