吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ―猫式領土争い 編―

2025年8月25日

吾輩は猫である ―猫式領土争い 編―

吾輩は猫である。名はまだない。
だが、この路地裏では古参だ。
それなりに「縄張り」というものを持っている。

縄張りと言っても、
境界線は電柱の影や植木の匂い、
屋根の上の陽だまりで決まる。
人間のように地図は要らぬ。
鼻と耳が、すべてを覚えている。

ある日、その路地に新人が現れた。
黒い斑の若造。
あろうことか、吾輩の魚屋ルートを我が物顔で歩いている。

吾輩は塀の上からにらみをきかせた。
若造は一瞬たじろぐも、しっぽをピンと立てて進む。
――宣戦布告である。

だが猫式の戦は、牙をむくだけではない。
まずは匂いの上書き合戦。
その次は、誰がより高い場所を取るかの勝負。
そして最終局面は、
真夜中の“にらめっこ”で決着する。

数日後、勝敗は決まった。
若造は魚屋ルートを諦め、
吾輩は塀の上の特等席を守った。

ただ――
気づけば、朝の陽だまりには、
二匹で並んで座ることも増えた。
争いは終われば、ただの隣人同士である。

吾輩は猫である。
守るべき縄張りも、
分かち合える陽だまりも、
両方、大事にしている。


スポンサーリンク

  • この記事を書いた人

gonta

-吾輩は猫である(現代編)