吾輩は猫である。
名前はまだない。
必要としていない時ほど、
勢いよく近づいてくる者がいる。
人間はこれを、
押し売りと呼ぶ。
勧める。
語る。
褒める。
そして、
断る隙を減らしていく。
だが、
本当に良いものは、
無理に押さずとも残る。
吾輩は思う。
距離感を失った瞬間、
信頼は減ると。
相手の様子を見ず、
自分の都合だけで近づけば、
言葉は重くなる。
猫は、
嫌な時には離れる。
しつこければ、
もっと離れる。
それだけである。
人間は、
「熱意」と「圧」を
混同することがある。
熱意とは、
相手を思うこと。
圧とは、
自分を通すこと。
似ているようで、
まるで違う。
必要な時に、
必要な分だけ。
それが、
長く続く関係になる。
吾輩は猫である。
薦めはせぬ。
だが、
近づき方の加減は知っている。
押し売りとは、
良さを伝える前に、
距離を壊してしまう行為なのだ。
押すほどに
心はそっと
離れゆく