吾輩は猫である。名はまだない。
ただ、カリカリの価格変動には敏感である。
特に昨今は、輸入品の値札を見るたびに、
**「これは関税か、円安か」**と首をかしげる日々だ。
飼い主はぼやく。
「同じ15%値上げでも、関税と円安じゃ訳が違うよな」
まったくだ。
では、吾輩が説明しよう。
関税15%とは、国が“わざと”値段を上げること。
たとえば、100円の海外キャットフードに15円の関税をかければ、
小売価格は115円。
この15円は国の財布に入る。
輸入元や為替には関係なく、政策的に操作される。
一方、円安15%とは、“円の力が弱くなる”こと。
1ドル100円が115円になると、
100円で買えていた輸入品が115円必要になる。
つまり、同じものを高く買わねばならぬ。
前者は「税」、後者は「貨幣の価値そのもの」。
違いは、“誰が得するか”だ。
関税なら、国が潤う(たぶん猫缶の補助金に使ってくれ)。
円安なら、海外の輸出企業が得をして、
吾輩の胃袋はただ縮むだけである。
飼い主が言った。
「どっちでも、カリカリが高いことに変わりはないけどな」
吾輩はうなずく。
だが心の中ではこう思っている。
関税はまだ理屈で戦える。
けれど、円安は感情でも為替市場でも止められない。
まるでどこからともなく来る風のようだ。
今日も棚の上のカリカリは少し小袋になっていた。
吾輩はため息をつき、
そっと円高の夢を見ることにした。