吾輩は猫である(現代編)

吾輩は猫である ― 3匹の猫ともふもふのしっぽ編 ―

2025年7月16日

吾輩は猫である ― 3匹の猫ともふもふのしっぽ編 ―

吾輩は猫である。名はまだない。
だがこの家では「長男猫」として、冷静と威厳を保っている(つもりだ)。

ただし、あのしっぽが現れるまでは。

――ちょび。
小柄で人懐こく、目はくりくり。
だが彼の真の武器は、その背後にある。

しっぽ。もふもふ。
いや、正確に言えば、一本の“毛布”である。

触れればぬくく、巻かれれば夢見心地。
吾輩ですら、気づけばあの毛布のそばで丸くなってしまう。

冷蔵庫の上からクロミが言う。
「今日も自前の暖房、働いてるね」
無愛想な彼女も、冬場だけはちょびのしっぽにだけ心を許す。

猫同士 言葉はなくて しっぽ寄る

ときに飼い主がふざけて「貸して〜」と触ろうものなら、
ちょびはくるんと丸まり、尻尾で顔を隠す。
それは毛布の所有権を守る、彼なりの矜持だろう。

ただ、夜だけは別だ。
飼い主が寝静まったあと、
ちょびはそっとしっぽを伸ばし、
吾輩とクロミのあいだに差し出す。

言葉はない。だが、伝わる。
「ほら、仲良くするにゃ」
――そう聞こえた気がした。

猫は孤独が得意な生きものだが、
毛布一枚で、世界がやわらぐ夜もある。


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gonta

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