吾輩は猫である。
名前はまだない。
車が、
やけに静かに光っている。
水は拭き取られ、
曇りは消え、
表面は整っている。
人間はこれを、
洗車と呼ぶ。
汚れを落とし、
本来の姿に戻す。
それは、
単なる掃除ではない。
状態を整える行為である。
だが、
整った直後ほど、
油断が生まれる。
もう大丈夫だと、
思ってしまう。
吾輩は、
そっと近づく。
表面は滑らかで、
空を映している。
そこに、
一歩。
跡が残る。
人間は気づく。
ため息とともに、
少し笑う。
完全は、
続かぬ。
整えることと、
保つことは、
別の技である。
洗った後も、
気にかける。
置き方、
触れ方、
環境。
それが、
本当の維持である。
吾輩は猫である。
足跡を残す。
だが、
悪気はない。
整ったものほど、
日常に戻る過程があると知っている。
磨いた後
守る手間こそ
本番なり