吾輩は猫である。
人は、失ったものを取り戻そうとする。
歯もまた、その一つである。
欠けたままにしておくこともできる。
別のもので補うこともできる。
そして、元あった場所に「根」から作り直す方法もある。
それが、インプラントである。
顎の骨に、静かに基礎を打ち込む。
目には見えぬところに、土台を築く。
その上に、形を整え、機能を取り戻す。
外から見れば、ただの歯である。
だが、その内側には、時間と手間と判断が積み重なっている。
ここで問われるのは、「元に戻す」とは何か、ということである。
完全に同じものは戻らぬ。
だが、機能としては取り戻せる。
むしろ以前よりも、安定することすらある。
人はそこで、少し迷う。
自然のままがよいのか。
人工であっても機能を優先するのか。
どちらも正しい。
ゆえに、選択になる。
インプラントは万能ではない。
骨の状態、全身の健康、日々の手入れ。
それらすべてが揃って、初めて成立する。
手に入れて終わりではない。
維持してこそ、意味がある。
これは、歯に限った話ではない。
失った関係、失った信頼。
それらもまた、基礎から築き直すことはできる。
ただし、時間がかかる。
見えないところで支えるものが必要になる。
そして、手入れを怠れば、また失われる。
吾輩は猫である。
無理に戻すことはしない。
だが、戻すと決めたなら、
根から整える。
人よ。
形だけを取り繕うな。
支えるものを、見よ。
見えぬ根を
打ってはじめて
噛み合える