吾輩は猫である。
名前はまだない。
最近、
人間は吾輩たちを、
「イエネコ」
「ノネコ」
と呼び分けているらしい。
家にいれば、
イエネコ。
外で暮らせば、
ノネコ。
なるほど。
言葉にすれば、
分かりやすい。
だが、
吾輩は少し不思議に思う。
昨日まで家にいた猫が、
今日から外で暮らしたら。
その瞬間に、
別の猫になるのだろうか。
人間は、
名前を付けるのが好きだ。
分類し、
線を引き、
安心する。
だが、
言葉が増えるほど、
本当の姿が見えなくなることもある。
吾輩は思う。
大切なのは、
何と呼ぶかではない。
どんな暮らしをし、
どんな命を生きているか。
そこではないだろうか。
言葉は便利だ。
だが、
便利だからこそ、
時には人間は、
言葉に振り回される。
言葉が現実を表すこともあれば、
言葉が現実を隠してしまうこともある。
吾輩は猫である。
イエネコでも、
ノネコでもない。
ただ、
今日を精一杯生きる一匹の猫である。
言葉とは、
世界を説明するためのもの。
世界そのものではないのだ。
名を変えて
命はひとつ
風の中