【吾輩は猫である 現代版】猫視点で描くオリジナル短編

吾輩は猫である ―ミニカー 編―

2026年9月20日

吾輩は猫である ―ミニカー 編―

吾輩は猫である。
名前はまだない。

机の上に、
小さな車が並んでいる。

赤。

青。

黒。

大きさは違えど、
どれも妙に精巧である。

人間はこれを、
ミニカーと呼ぶ。

走るわけではない。

人を乗せるわけでもない。

それでも、
人間は眺めて喜ぶ。

吾輩は思う。

本物でなくても、
心を動かすものはあるのだと。

昔乗っていた車。

憧れていた車。

子どもの頃に欲しかった車。

小さな車の中に、
人間は大きな思い出を入れている。

不思議なものである。

吾輩なら、
転がるものを見れば、
まず前足で触る。

少し押す。

動けば追う。

棚から落ちれば、
知らぬ顔をする。

人間は慌てる。

「限定品なんだぞ。」

知らぬ。

猫にとって、
限定かどうかより、
転がるかどうかの方が重要である。

だが、
吾輩は少し分かってきた。

集めるとは、
物を増やすことではない。

好きだった時間を、
少しずつ残しておくことなのだ。

一台ずつ見ると、
小さい。

だが、
並べて眺めれば、
その人の人生の一部が見えてくる。

初めて買った車。

いつか乗りたい車。

もう手放してしまった車。

現実では戻らぬものも、
小さな形なら、
いつまでも棚の上に置いておける。

吾輩は猫である。
免許は持たぬ。

だが、
小さなものに大きな思いを込める人間の気持ちは、
少し分かる。

ミニカーとは、
車を小さくした玩具ではない。

走ってきた時間や、
これから走りたい夢まで、
手のひらに収めておくための、
小さな記憶装置なのだ。


小さき車
思い出だけは
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gonta

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