吾輩は猫である。名はまだない。だが「ミスター」と呼ばれる男の名は、街角のテレビから今も流れてくる。そう、長嶋茂雄――というらしい。 野球という遊びのなかで、彼はひときわ派手に、そして自由に動いたそうだ。「サードの守備が舞っていた」「バットを振るたびに風が変わった」――人間はそんなふうに、まるで伝説を語るように話す。 ふむ、どこか吾輩に似ていなくもない。 気まぐれで、華やかで、理屈ではなく感覚で生きている。だがその背後には、並々ならぬ集中力と、“型にはまらぬ型”があったという。 飼い主がかつて言った。「ミス ...