吾輩は猫である。名前はまだない。 盤の前に、時間の厚みがある。言葉は少なく、所作は正確だ。 人間は、その人を加藤一二三と呼ぶ。 早口で、穏やかで、しかし一手は重い。考えるというより、待っているようにも見える。 吾輩は知っている。勝負とは、急ぐことではない。置くべきところに、置くことだ。 時計が進み、昼が過ぎ、夜が来る。それでも、盤の中心は動かぬ。 積み重ねた日々は、派手に語られぬ。ただ、一局一局として、残っていく。 人は記録を読むが、本当の強さは、空白に宿る。考えすぎず、怯えず、同じ姿勢で座り続けること。 ...