吾輩は猫である。名前はまだない。 街の音が、少し違う。遠くで低く響き、近くでは人の声が減る。 人間はこれを、戦争と呼ぶ。 昨日まで開いていた店は、半分閉じ、灯りは早く消える。空を見上げる時間が、増えた。 猫は、理由を知らぬ。国も、思想も、境界線も持たない。 それでも、変化はわかる。 餌は減り、足音は急ぎ、人の目には余裕がない。 猫は、静かに場所を変える。危うい通りを避け、安全な影を選ぶ。生き延びるとは、正しさよりも柔らかさである。 人は戦い、勝敗を語る。だが、瓦礫の上ではどちらの足跡も同じだ。 夜になると ...