吾輩は猫である。名はまだない。 飼い主が旅行から帰ってきた。玄関のドアが開くなり、スーツケースの中から「ほら、買ってきたよ!」と笑顔で差し出したのは――魚の形をしたキーホルダー。 ……吾輩はしばし沈黙した。 期待していたのは、せめてカツオ節か、サーモン味のパウチである。だが飼い主の満足げな顔を見たら、文句のひとつも言えぬ。「気持ちが大事」とは、こういうことなのだろう。 袋の中から、さらに出てきた。「猫用まくら」「旅先限定キャットミルク」「温泉の匂い付きタオル」。……要するに、人間が楽しそうに選んだ物たちで ...