吾輩は猫である。名はまだないが、劇場の天井裏から舞台を見守っている。今日もまた、スポットライトの中で、二人の魔女が歌っていた。 ひとりは緑色の顔を持つ、風変わりな魔女。もうひとりは、金髪がまばゆい人気者。名はエルファバとグリンダというらしい。違う見た目、違う考え、だが確かに――心のどこかで通じ合っている。 人間は見た目に惑わされる生き物だ。緑の魔女を「悪い」と決めつけ、笑顔の魔女を「正しい」と信じる。だが吾輩は、夜のしじまに黙って涙をぬぐうエルファバの姿を知っているし、誰にも見えぬところで祈るグリンダの背 ...