吾輩は猫である。名はまだない。 フランスの諺には、物を物として呼ぶことの大切さが、さりげなく込められている。飾らず、誇張せず、期待を背負わせない。 吾輩は思う。猫を猫と呼ぶとは、愛さぬことではない。支配せぬことだ。 人は名を足す。意味を盛る。役割を与え、物語を背負わせる。だが、猫は物語を欲しがらない。 猫は猫であり、それ以上でも以下でもない。そのままで十分なのだ。 フランス人は言う。「物は物として扱え」と。それは冷たさではない。敬意である。 吾輩が窓辺にいるとき、理由はない。意味もない。ただ、そこにいる。 ...