吾輩は猫である。名はまだない。季節の風がじめりと変わる頃、人間たちはそわそわし始める。「ボーナス出た?」「今年は減ったらしい」――どうやら“賞与”なるものが出る季節らしい。 飼い主もその例外ではなく、いつになく機嫌がいい。「今回は頑張ったし、たぶん上がってるはず」期待に胸を膨らませ、スマホで“平均支給額ランキング”などというものを眺めている。 ふむ、人間は働いた見返りに“ごほうび”をもらうらしい。ならば吾輩も、ネズミを追い、虫を知らせ、来客に気を張っている。その報酬が、カリカリ2粒ではやや釣り合いが取れぬ ...